大阪地方裁判所 昭和41年(手ワ)2690号 判決
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〔判決理由〕なお被告(註、裏書人)は完成手形として振出されたものなること、白地部分がある場合にはこの部分について補充権が付与されており、かつこれにもとづき補充のなされたことを原告(註、所持人)側で主張立証すべき旨主張するので付言するに、手形法上、白地手形というのは被告主張の如きものではあるが、訴訟上、主張立証責任の帰属については実体法からみた白地手形なるものの要件とは別個に考えらるべき事柄であつて、法文上手形法第一〇条の文言からみても又実質的に考えても自己の前者のうちの誰かが補充権を行使している場合などには手形のどの部分が白地であつたか、あるいは補充権をどの部分に与えていたか、又は誰がその補充権を行使したかを転々流通する手形の取得者たる原告に主張立証させることははなはだ困難であり、しかも取引上特に受取人あるいは振出日を白地として振出しこれを流通せしめることが極めて多い実情にあり、振出人としても転々流通することを予想し得るのにことさら白地部分のある手形を振出しておいて単に補充権を否認するのみで何故未完成の手形を流通せしめたかを主張立証させないのは当を得たものとはいえないなどの事情に鑑みるとき、原告において未完成なるにもせよ手形として振出されたものなることを主張立証した以上(手形として振出されたか否かは認定上の問題であるが手形用紙に署名ある以上手形として振出したものというべきである)被告において抗弁として手形振出当時未完成部分があり、これに対し補充権を付与していないこと又は予め付与した補充権の範囲を越えた補充がなされていることおよび所持人において手形取得に際し右事情につき悪意又は重過失のあることを主張立証すべきものと解する。(中略)
振出人たる訴外株式会社日証金が昭和四一年一〇月一三日大阪地方裁判所において破産宣告を受けたことは当事者間に争いがない。手形法第七八条第一項により約束手形の振出人は為替手形の引受人と同一の義務を負うのであるから約束手形の振出人が法定の呈示期間経過前に破産した場合には同法第七七条第一項第四号、第四四条第六項により遡及権行使の要件として呈示は必要としないことが明らかである。したがつて呈示が不要である以上呈示を適法たらしめるため呈示の際白地部分を補充して完成手形としておく必要もなく、(補充権の時効消滅しない限り)口頭弁論終結までに補充すれば足りるものというべきである。(宇井正一)